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Bプレミア参入に必要な条件
参入に必要な条件はいくつかありますが、主なポイント3つに絞って紹介します。
条件1:収容人数5,000人
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ブレックスアリーナのBリーグ試合日の観客数は約4,500人です。それならば不足している500人分の座席を増やせば解決するのでしょうか?
残念ながら現実はそんなに甘くありません。ブレックスアリーナのもともとの席数は2,098人となっており、公式戦では1階席にコートギリギリまで椅子を並べることで収容人数を増やしています。さらに立見席を導入してなんとか4,500人が観戦できるアリーナを作り出しています。
さて、ここでBプレミアの基準条件を見てみましょう。
基準条件:◆5,000席以上の観客席数を有する
イ:固定席(スタンド席)
ロ:アリーナに設置される施設に常設、または常備されている可動席(壁面収
納型)、および移動席(移動式設備)
ハ:アリーナにクラブが独自に設置(施工、設営)する仮設席(ただしイスを置いただけの座席は除く)
ニ:アリーナにクラブが独自に設置するイス席
ホ:施設、および消防に正式に認可された「立見席」エリアに設定されたスペ
ース・入場可能数の算定に算入できる立見席は、入場可能数の10%以下とする。
https://www.bleague.jp/files/user/about/pdf/r-38.pdf
・設置する「立見席」によって、既存席の観客が不利益を受けないこと。
・上記条件に従い、「立見席」スペースの設定を設営、施工によって明確に
行うこと
・個人毎の立見位置に番号・記号が表示できる(チケット表記との同一性が確保できる)
・通路上での設定の場合、他の観客の通行の障害とならない
読んだ限りでは、現在の試合で1階席に設置されているようや折りたたみイスはカウントされないのではないでしょうか。(詳しい方教えて下さい!)
しかしながら、1階席部分を固定椅子に変更してしまうと、体育館の一般利用できるスペースが減ってしまいます。この点をどのようにクリアするのでしょうか?
また、立見席を増やすことで観客数5,000人をクリア出来そうに思えますが、上限10%と決められているため立ち見客は500人までとなります。そして立見席にもかなり厳しい条件が課せられています。
そうなると体育館の限られたスペースを利用して観戦用の椅子を設置することになりますが、その他にもVIPルーム設置や専用動線の確保も必須となっており、非常に窮屈になってしまいます。
そして、もう一つの不安要素は改築のプランに「座席数の増加」が第一報では組み込まれていないことです。現時点で座席数の条件を満たしているとは思えなかったので、再度確認が必要な事項です。今後、追加でアナウンスがされるかもしれません。(→後日情報発表がありました)
条件2:VIPルームの設置
・スイートがあること
https://www.bleague.jp/files/user/about/pdf/r-38.pdf
スイートとは、飲食や談話等を楽しむことができる原則、居室化されたスペース・席とそれとは別に試合を観戦する座席が併設配置されたスペースであること
※居室化とは周囲から視覚的に独立し周囲の音などから遮断されている状態のことをしめす
・ラウンジがあること
ラウンジとは試合観戦する座席を備え、それとは別に飲食や談話するスペースやエリアがあること
◆VIPが利用時には入場口からスイートには他の利用者と隔離された動線(一時的でも可)確保されている
◆スイートについてはホームゲーム開催時には入場可能数の2%以上が利用可能な席がある
ただでさえ座席数増加でスペースがないのに、周囲から遮断されたスイート(VIPルーム)を設置しなければならず、専用の動線も設置が必要です。基準要件を見る限りは5000席の2%以上、つまり100席のスイート個室内の座席設置が必要です。
さらにラウンジも用意しなければなりません。前編で書いたように座席だけでもスペースが足りない状況です。ラウンジのための空間をどのように捻出するか、非常に大きな課題となりのしかかっています。
条件3:トイレの増設
Bプレミア参入のためにはトイレの数にも厳しい条件が設けられています。
観客エリア内に入場可能数に対して、右記割合の人が同時に利用可能な規模でトイレ設備がある入場可能数 5,000人までは3%とし、5,000人を超える人数に関しては推奨2.5%、必須2%とする。
https://www.bleague.jp/files/user/about/pdf/r-38.pdf
基準要件をみるに150人が同時にトイレを利用できる設備が必須となっています。現状のブレックスアリーナは約70基のトイレが設置されていますが、全く足りていないことは明らかです。この点についても新規スペースの確保、トイレ増設は必須となってきます。
条件をすべて満たすのにかかる費用は?
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宇都宮市長佐藤氏、運営会社栃木ブレックス社長藤本氏より詳細について書かれています。抜粋すると以下の通りです。
・座席数に関しては言及なし
・トイレは不足分を増設(約80基)
・スイートルーム、ラウンジ、トイレ、飲食販売スペースについて部分的な改修を行う
・工事期間は約5カ月で2025-26の開幕前のシーズンオフの期間に行う
・費用はおよそ3億円の見通し
・新アリーナ計画は続行する
読んだだけで2点ほど怪しい部分があります。
1つ目は座席数に関して特に言及がなかったこと。Bプレミアの審査部門と事前に話が通っていて現状のままでOKならば良いのですが、少なくとも先述したBプレミア要件は満たしていないのです。この点は確認が取れているのでしょうか?さすがに大丈夫だとは思いますが、杞憂であってほしい所です。
他記事を見ても「市体育館の収容は立ち見席を含めて5005席で基準を満たしているが…」と書かれており、座席数については既にクリアしているように書かれています。条件が緩和されたのでしょうか?
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2つ目は新アリーナ計画について。もちろん新アリーナ建設は大いに賛成なのですが、ブレックスアリーナ改修により3億円をつぎ込んでいるので、このまま改修後のアリーナを2~3年しか使わないというわけにはいかないでしょう。もちろん民設民営で新アリーナ計画が順調に進めばいいのですが、今回は上手くいかずに一旦断念しているわけです。今後、他の企業にお願いをするにも、宇都宮市が金銭面で全くの負担なしで新アリーナを建てるのは非常にハードルが高いです。
新アリーナの完成は少なくとも2030年以降になるでしょう。仮に2030年に完成したとしても現在のブレックスアリーナは3年間しか使わないことになりますし、たった3年のために3億円を投資する点において市民の賛同を得られるでしょうか?
また、ブレックスアリーナがBプレミア参入要件を満たしてしまえば、新アリーナ建設の大義名分を失ってしまうことになります。この点は現市長、ブレックス運営側も当然理解しているはずなのでしょうが、苦渋の決断だったのでしょうか。
ここからは個人的な意見ですが、3億円で改築ができれば、むしろかなり安いと思います。新アリーナの建設はかなり少なく見積もっても50億円はかかるでしょう。
藤本氏も「新アリーナの規模などは公表できないが、チャンピオンシップの開催を踏まえた施設を考えていきたい。」と朝日新聞の取材で話しており、8000人以上収容できるアリーナを目指すことになります。そうなるとかなり少なく見積もっても建設費は80億円以上かかるでしょう。そもそもパートナーとなる企業が決定していないのに8000人規模のアリーナを目指すことを宣言しているのはなかなか攻めている気がしますが…。
話は戻りますが、新アリーナができるまでの数年間の繋ぎを本当に3億円で行えるのであれば、リーズナブルであると思います。
しかし、この「3億円」という数字が疑問が残ります。これからプロポーザルで入札を始める段階で、まだ見積もりも出ていません。本当に改修費が3億円で済めばいいのですが、膨れ上がって全額が市の負担となると新アリーナ計画への反対意見が増えることは避けられません。この改修費の見積もりが出てからの正式発表でも良かったのではないかと思いますが、急ぎ足になってしまっているようです。
最悪のシナリオとは…
付け焼刃で計画されたブレアリ改築ではありますが、まずはしっかりBプレミア参入のための審査をクリアすることが重要です。今年の秋に審査がありますが、そこを通過しないことにはブレックスは最上位リーグに残ることすらできません。審査に落ちるという最悪のシナリオは避けたいところです。
そして新アリーナ計画についてですが、当然のごとく現時点でアリーナ計画断念の話を宇都宮市側がすることはまずありません。年末に市長選を控えているからです。問題はその市長選後に新アリーナ計画を撤回される可能性があることです。すでに市議会でも問題提起されており、反対派も少なからずいることを忘れてはいけません。
これは首都圏の某Jリーグプロサッカーチームでも実際にあって8年以上新スタジアム計画が凍結しています。宇都宮市も似たような状況に陥ってしまうことは避けたいです。
仮に新アリーナ計画が進んだとして、パートナー企業の予算によってはアリーナ規模が縮小となることもあるでしょう。藤本氏が8000人規模のアリーナにこだわっているのは、これがプレーオフでのチャンピオンシップス決勝開催の条件となっているからです。ブレックスが強豪チームであるがゆえに上記条件を満たしたいところですが、新アリーナ建設のハードルを高くしてしまっているとも言えます。
まとめ
さて、長くなったので要点だけ箇条書きで簡潔にまとめることにします。
- 現ブレックスアリーナ改修が3億円で済めばリーズナブル
- 改修が決定したことにより新アリーナ計画は一歩遠のいた
- パートナー企業を探しているが建設費が高騰しており難しい
- 夢のアリーナに高望みをすると計画そのものが頓挫してしまう可能性がある
- 民設民営のまま進められるのか疑問が残る
最後の民設民営の点だけ新規事項なので触れておきます。
福井県のバスケットボール新アリーナは当初は民設民営で建設が予定され60億円(収容観客数 5000人)の想定でした。しかし、その後費用は75億円に増え、その後整備費用は105億円に膨らみました。その結果何が起きたかというと、整備費用のうち50億円を県と市の補助金でまかなう方針となったのです。
他県の例は他にもありますので、興味があったらご自身で調べてみてください。夢のアリーナ建設は夢を語っているだけでは前進できないのかもしれませんね。